埼玉県 Y様

風合いはそのままに、古い桐タンスを使えるようにしてほしいとご依頼頂きました。
引出が固くなっていたので、スムーズに動くように調整をご希望でした。
実際にものを拝見し、組み手のゆるみや割れなどありましたが、修理可能でしたので、お引き受けしました。
作業内容は以下の4点です。
・全体を丸洗い清掃
・各所のゆるみを再接着
・割れている部分を埋木
・引出がスムーズに動くよう調整
全体を水洗いするために裏返してみると、とても勢いのある筆跡の墨書きがありました。

全てを判読できなかったのですが、箪笥の作りなども考えると、江戸~明治期に書かれたものじゃないかと思います。
古いものの修理はこういった発見もなかなか面白いです。
つくりも現代とは違っていて、なかなか興味深いです。
組み手は、材料を節約するために、手間をかけて複雑な加工をしています。
見つけ(正面、上面)の部材は厚く、奥は薄くなっています。
板厚がだんだんと薄くなるので、板と板が組み合わさる部分が斜めになり、加工が複雑になります。

当時、いかに材料が高価だったかが伺えます。
引出の底板部分は割れてしまっていたので、埋木をして補強しました。


画像の縦一直線の白い部分が新たに埋木した部分です。
昔はボンドのような接着剤などなかったので、続飯(そくい、そっくい)と呼ばれる飯粒を練ったものを接着に使っていました。
そのため、古い桐タンスの接着面はよく虫に食われており、接着面の埋木修理はよくある事例です。

虫たちは何故、ご飯が使われている箇所を探し当てられるのか不思議です。
虫の優れた嗅覚系にも驚くばかりです。
色々と発見があり話がそれてしまいましたが、長い時を経てきた大切な桐タンス、これからも長く使って頂ければと思います。
Y様、この度はご依頼ありがとうございました。
参考価格
タンス引出調整 ¥8,800~/1杯 (税込、送料別)
※補修や部材の作り替えが必要な場合には別途料金がかかります。
ご依頼方法についてはこちらをご覧ください。
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